Dendrobium hercoglossum/デンドロ・ヘルコグロッサム

1.

此処では真夏に咲く、蕊柱の先の紫色が印象的なデンドロビウムが、広州セッコクの名で売られていたのはもう35年ほども昔になろうか。

以来、高芽で何度か更新しながら、維持している。

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原産地ではいざ知らず、この地では気候的条件からか、手入れの巧拙によるものか、日本のセッコク程度の大きさに止まっている。

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春から成長した偽球茎が冬に葉を落として、翌年の夏に節々から花芽が出てきて開花に至る。(さらに古い偽球茎から花咲く場合もある。)そのサイクルもセッコクに似た点が多く、同様の育て方でいける。0度ぐらいの低温には耐える。

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真夏の花でこれだけ花持ちのするものも珍しい。身近にみると判るが、ぷっくりとした、非常に肉厚の花だ(特にリップ)。

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香りもある。良い香り、と言ってもいいのだが、ひょっとすると好悪が分かれるかもしれない。悪く言えば、昔の台所洗剤を思わせる、硬く人工的な感じのする香りなのだ。

 

Paphiopedilum insigne/パフィオ・インシグネ

1.

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写真の園芸変種‘Sanderae’サンデレーを手に入れて25年にもなる、長い付き合いである。

今も、雪を被ったかのようなドーサル・セパル、砂糖菓子を思わせる、花の中心部の仮雄蕊(スタミノード)の質感に魅せられたままだ。

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昭和の高度成長期までの園芸本には、初心者がまず手がけるべき洋ランとしてよく名前が挙がっていた。

その園芸的価値、日本の気候への適応性、サイズの扱いやすさ、花つき・花もちの良さ・・・数々の美点にもかかわらず、今日に至るまで、ついに一般的なポピュラリティを獲得することができずにいるのが残念だ。

鉢中が凍るとダメだが、0度近い夜温に耐え抜き、他のパフィオの開花が止まってしまう低温条件でもめげずに開いてくれる。

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左が一般的なタイプ、右のサンデレーは、色素が抜けて細点のみを残したもの。

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 一般タイプの花つきはサンデレーに劣るが、2つ揃えてみれば、どちらが欠けてもさびしく感じられるようになる。

はじめに

裾物、=普及品(≒安物)の意味で、一部園芸界で使われる言葉である。

ここでは、普及度には関係なく、流行に乗らない(乗れない)園芸植物たちを取り上げる。

ただし、マニアに見捨てられ、一般人には振り向かれず、といった微妙な立場のプランツが多くなるのは仕方なかろう。

掲載時期と開花期は一致しないことが多いと、最初にことわっておく。